MQ Server for Industrial IoTは、産業用IoT環境に最適化されたMQTTブローカーサーバーシステムの構想です。本システムは、低コストで安定的なIoT用データ通信を提供することを目的としています。産業用IoTシステムにおける問題は、データのブローカーシステムをどのように安定的かつ低コストに運用するかである、というのが本サービスを検討開始した動機です。
産業用IoTシステムにおいて、データの管理を担う「ブローカーシステム」は安定性と低コストが非常に重要です。これについて説明するために、代表的な通信プロトコルであるMQTTを例に挙げてみましょう。
IoTシステムは大きく3つの要素で成り立っています:
IoTシステムの設置において、管理機材(ブローカー)の設置場所や方法は非常に重要です。特に中小企業では、IoTシステムに割り当てられる予算が限られているため、できるだけ低コストで運用できるシステム構成を考える必要があります。
例えば、最も安価な方法として、ArduinoとW5500 Ethernetシールドを使ったシステムを考えます。この場合、Arduinoでローカルネットワーク内のサーバーを立て、データを受け取りつつ複数の端末にデータを送信することができます。しかし、Arduinoはその基本的な処理能力が限られているため、リアルタイムでデータが増加すると処理が追いつかなくなります。
次に、ラズパイを使う方法も考えられます。ラズパイを使えば、処理能力が向上し、データの送信や管理が可能になります。しかし、ラズパイにはストレージやメンテナンスの問題があり、長期間安定して運用するためには追加のコストが発生します。
ラズパイを使用する場合、例えばラズパイZeroの場合、以下のような追加コストがかかります:
これらを合わせると、能力の限られたラズパイZEROで5000円程度、もう少し余裕を持ったラズパイであれば10,000円~30,000円のコストがかかります。また、ラズパイを長期間安定して稼働させるためには、ハードウェアのメンテナンスが必要であり、故障や交換のリスクもあります。
これらのハードウェアの問題を解決するために、VPS(仮想専用サーバー)を利用する方法があります。VPSを使うと、物理的な機器を現場に設置する必要がなく、メンテナンスも最小限で済みます。例えば、NTTのWeb ARENA VPSで、月額319円で以下の性能を提供するプランがあります:
これにより、ハードウェア設置場所の問題や、電子機器の過酷な環境における稼働問題を回避できます。また、VPSの運用はほとんどメンテナンスが必要ないため、長期間安定して稼働し続けることができます。
VPSを使う場合、月額319円が30,000円を超えるまでに約7年10ヶ月かかります。15,000円を超えるとしても約3年11ヶ月はかかります。この期間で、ラズパイやラズパイZeroであれば、ハードウェアのメンテナンスや交換の必要性が出てくる可能性が高いです。
産業用IoTシステムにおいて、データ管理を担うブローカーシステムの選定は、どこで、どの機材を使って運用するかが非常に重要です。その結果、運営や維持に必要なコストが決まってきます。限られた予算の中で、VPSなどの低コストで安定した運用方法を選ぶことが、長期的に見て最も効率的な方法となるのです。
MQサーバーサービスは、次の要素が含まれます。